雛人形に対する母と娘の想いが描かれたお話
母は子どもの時に買ってもらった特別な雛人形が忘れられない。大事にしていたのに空襲で燃えてしまったのだ。10歳のよし子は商店街にある店のショーウインドウに飾られている人形がほしくて母に伝えるが、とりあってもらえない。とはいえ、そろそろ雛人形を与えてやりたいという気はある母は、よし子と一緒にデパートに出かける。ピンとくるものが無い母と、たくさんありすぎて選べない娘。ある日久しぶりにクラス会に出かけた母はご機嫌で帰宅する。そして三月三日がやってきた。
母親の思い出の雛人形の詳しい描写と挿絵がピッタリ響き合って美しいです。デパートの売り場や食堂の様子も懐かしく、この時代の空気感が伝わってきます。空気感というと、三月三日によし子が家に帰った時、とても美しい描写がありました。
「動いていたのは、においでした」
これがどのような状況だったのか、ぜひ読んでみてください。