立原えりか童話集 I
立原えりかと言えば、妖精や小人が出てきたり、主人公が不思議な体験をするファンタジーやメルヘンの作品が多いですが、この本の最初の「人魚のくつ」はちょっと違います。“人魚”という言葉からそれらしい雰囲気を醸し出していますが、とても現実的なお話です。でも、主人公の男の子が「人魚のくつ」だと思っている様子をそのままにしておくところがステキです。
「お姫さまをたべた大男」という話は、タイトルからちょっと残酷な展開になるのか、と構えてしまいますが、最後にはホワッとした気持ちになれます。
そして本のタイトルである「木馬がのった白い船」は、郷愁を帯びた少し寂しいストーリーではありますが、“あぁ良かったね”と読者を安心させてくれます。
読み手の想像を少しだけ裏切りながら、いろいろな感情を起こさせる本です。
5巻まであり、全てカバーと挿絵は画家で夫の渡辺藤一氏によるものです。