立原えりか童話集 III
妖精や小人が出てきたり、主人公が不思議な体験をする、ファンタジーやメルヘンの作品を数多く発表してきた立原えりか。
表題の「青い羽のおもいで」は長めの話で、本の半分を占めます。青い羽を持つ不思議な一族と人間の兄妹との関わりが、いろいろなエピソードで語られます。氷のはさみで切ったスミレ色の空のお菓子、食べてみたいです。プロローグに出てくる“わたし”が誰だったのか、わからないままなのが残念でした。
「古いシラカバの木」は山を上り下りする人間が道に迷わないように歌を歌う2本のシラカバの話です。年老いて古くなったシラカバほどには歌えない若い丈夫なシラカバ。自分の寿命を悟った老木は、若木が自分の代わりにちゃんと歌えるように最後の最後まで力を尽くして教えます。人間世界の師弟関係そのままです。
一年の半分以上雪に閉ざされる寒い町に、あたたかいスリッパを作ってくれるおじいさんがいました。大きな町で売っている毛皮製や電気式のスリッパよりも重宝されていました。何年も経ち、目がかすんできて昔のようには作れなくなったおじいさんのもとに、1ダースの注文が来ます。さて、おじいさんはどうするでしょうか。
さまざまな読後感のある短編集です。