日本で起こった世界最大の単独航空機事故を基にした衝撃作
1985年8月12日の19時頃、羽田発大阪行き日航123便が姿を消す。長野県と群馬県の境にある御巣鷹山に墜落し、乗員乗客524名のうち520名が命を落とした「日航ジャンボ機墜落事故」。地元地方紙の社会部記者として取材に加わった横山秀夫が、自らの体験を基に綴った小説が原作。
主人公は事故当時、地元新聞社の記者で、全権デスクに任命される。そのため新聞社内が主な場面になるのだが、通常セリフが無い人達はエキストラを使うところ、編集局フロア50名は全員役者で揃えたとのこと。それが説得力と臨場感を生み、凄惨な事故現場の再現も含めて、原田眞人監督やスタッフ達の覚悟が伝わる。
現場を取材するためにスーツ姿で登山をし、他紙を出し抜く情報を何とか民宿の電話を借りて送る記者。現代であれば、ちゃんと登山装備を整え、水を持ち、携帯電話や無線を駆使して情報を届けることができるのだろうが、当時はそんな常識も設備も無い。そんな過酷な体験をして情報を持ち帰ってきた記者、記事を扱う複数の部署、販売局、広告局。それぞれの立場や言い分や力関係もきっちり描かれている。
山登りの装備をした60代の男性が上越線土合駅の長い階段を上がっていく場面も秀逸。