ほとんど語られてこなかった日本の恥部を明らかにした劇映画
ちょうど100年前、1923年9月1日に起こった関東大震災。直後から「朝鮮人が火をつけた」だの「朝鮮人が井戸に毒を入れた」だのデマが飛び交い、それを信じた人々により各地で朝鮮人狩りが横行。間違われた中国人や日本人に加え、被差別部落出身者、身障者、社会主義者などが混乱に乗じて殺され、犠牲者は6,000人を超すと言われています。
千葉県福田村では香川県から来た行商人15名のうち9名(妊婦もいたので正確には10名)が朝鮮人と誤解されて殺されました。この事件を基に、ドキュメンタリー作家で映画監督である森 達也が初めて撮った劇映画がこの作品。映画会社が企画を通さなかった為、クラウドファウンディングで資金調達し、無事に公開されました。
噂と恐怖心と憎しみに支配されて行商人達を襲ったのは、普段から自分は清く正しいと思っていた人達。
暴挙を止めようとしたのは村人から嫌われたり、煙たがられたり、不道徳だと後ろ指をさされていた人達。
オセロのように簡単に裏返る“正しさ”
ムラ社会の閉塞感、集団の恐ろしさ、差別や偏見、プロパガンダ、流言飛語、愛国心、自己陶酔、報道の意義など、現代にも通じるさまざまな要素が詰まっています。
パンフの表紙にもなっている、作品終盤にボートの上で交わされる夫婦の会話が象徴的です。