盲目の童話作家が、失明から盲導犬を得るまでを綴ったエッセイ
著者の佐々木たづ は高校3年の夏、突然片目の視力を失い、3年後には緑内障により両目を完全に失明してしまう。童画家になりたかったことから童話を書くことを思い立ち、初めて書いた童話を小説家の野村胡堂に見てもらい指導を仰ぐ。その後7つの話をまとめた童話集『白い帽子の丘』を自費出版すると第1回厚生大臣児童福祉文化賞を受賞し、童話作家への道を歩むことになる。
日本に初めて盲導犬が紹介されたのは1938年だが、それからしばらく盲導犬育成事業は停滞。日本で初めて厚生省の認可を得た盲導犬協会が設立されたのは1967年。佐々木さんが盲導犬を得たいと思った時は日本に訓練所はなく、1961年(昭和36年)にイギリスに申請を出し、翌年渡航した。
この本は失明から盲導犬ロバータを日本に連れて帰るまでの彼女の人生を綴ったもので、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、後に国際児童年のためのアンデルセン賞特別優良作品賞を受賞した。
視力を失っていく過程や手術の様子、家族や周囲の助力などが克明に書かれていて、ページを繰る度に様々な感情が湧き上がります。盲導犬を得ることもさることながら、盲導犬を育てることも大変な作業だとわかります。身近にパピーウォーカーをしている家族がいますが、それも盲導犬育成の大事な一歩なんですね。