若冲の少年時代が目に浮かぶような物語
江戸時代、京都に生きた絵師の伊藤若冲。彼を語る時、多くはどれだけ緻密な絵を描いたか、ということに言葉が費やされ、生い立ちは「錦小路の青物問屋の長男、一度は家業を継いだが、40歳で弟に店を譲り、絵師として一生を終えた。」くらいが普通です。
でもこの本は物語。どんな少年時代を過ごして、いかにして“絵師若冲”になったか、が史実を基に想像で描かれています。きっかけは日本にやってきた象。もしかしたら目にしたかもしれない白い象。象との出会いが彼を絵師に導いたという説は、あながち間違っていないような気がします。私が若冲に抱いていた印象と、この物語の若冲はそれほど近いのです。