内容も構成も抜群にうまい!
無名の陶芸家が気合を入れた会心の出来の青い壺。妻がデパートの担当者に売ったことを始まりとして、購入・贈答・盗難などさまざまな手段で、次から次へと人の手を渡っていく様子が13の短編で語られます。
各編それぞれの登場人物は、全く別の人物だったり、前の話の親戚縁者だったり。読者は「今度の話はどこでどんなふうに青い壺が絡んでくるのか」を想像しながら読み進めることになります。
最後の第十三話の持ち主が誰なのか、その持ち主に関わっている人が誰なのか、そこにこの本の構成の上手さがあります。
私はふと、この青がどんな青色なのか、ということが気になってしまいました。文章内に「砧青磁」という文言が出てきます。普通、青磁と言えば表紙にもあるようなエメラルドグリーンのような、乳白色が入ったようなグリーンだと思うのです。でも十三話で言及されているように、昔の中国の青磁はもっとブルーに近く、それを「砧手の青磁」と呼ぶようなのです。作者の有吉佐和子が思い描いていたこの壺の色をとても知りたいです。
そして十三の話の内、私が好きなのは第七〜八と九話です。七〜八は親子で繋がっています。